ふじた神経変性疾患レジストリの活用と連携推進に根ざした健常加齢における脳・全身エネルギー代謝マップ作成:Parkinson病とAlzheimer病の病態解明を目指して
医学部 脳神経内科
Alzheimer病 (AD) やParkinson病 (PD) は爆発的な増加が想定され、根治療法の開発が急務である。以前より当科ではふじた脳神経内科レジストリの構築を進め、神経変性疾患の多層階層の病態解明を目的として、網羅的に、臨床データ、血漿、血清、DNA、リンパ球、髄液、脳画像を収集してきた。収集したデータを様々な解析手法を用いて、検討し病態解明を目指し、複数の研究機関、企業などとも連携し、推進している。現在、550例を超えるデータの蓄積に成功している。
このレジストリデータを基に、ADやPDの脳では、加齢に伴う脳ハブの過活動が回路破綻を引き起こしていること、ミトコンドリア機能の低下を代償するプリン体のサルベージ合成経路が障害されていること、脂質・脂肪酸の障害があること、その処理と維持に多くのエネルギーを用いるタンパク質の分解系の異常を認めることを明らかにしてきた(図の赤文字)。
これらの結果は、ADやPDの脳と全身では、エネルギー代謝異常 (ATP欠乏) が、発症早期から関与することを示唆する。一方で、創薬のターゲットを絞るには健常加齢の変化を見出すことが重要である。
そこで、以下の3点を目標に研究を進めている:1) 健常者100例を対象として、解糖系を評価するFDG-PET、ミトコンドリア機能を評価するBCPP-EF-PET、glymphatic systemを評価するDTI-ALPSを用いて脳のエネルギー代謝画像を作成する。2) LC-MS/MSを用いた50種類以上のリピドーム解析、イノシンやヒポキサンチンをはじめとするプリン代謝物解析、短鎖脂肪酸測定、プレ・プロバイオティクス学講座における腸内細菌解析、Inbody 770による体脂肪、筋量測定、AD関連タンパク質測定などにより、網羅的認知症関連エネルギー代謝関連バイオマーカーバンクを併せて作成する。最終的に、3) 脳のエネルギー代謝画像に、網羅的認知症関連エネルギー代謝関連バイオマーカーを突合させた健常加齢における脳・全身エネルギー代謝マップを世界に先駆けて構築する。このマップ構築は、ADやPDの病態解明に大きく寄与すると期待される。
特許・論文情報
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