携帯型エコーを用いた誤嚥・咽頭残留の観察方法の普及に向けた取り組み
社会実装看護創成研究センター
背景
看護師が誤嚥性肺炎予防のための介入を行うにあたり、誤嚥や誤嚥の要因となる咽頭残留が疑われる対象を抽出することが求められる。臨床では視診や聴診にもとづくフィジカルアセスメント、水飲みテストなどのスクリーニングテストが広く実施されている。しかし、可視化をせずに行うフィジカルアセスメントやスクリーニングテストでは、気管内の誤嚥や梨状窩・喉頭蓋谷の咽頭残留の同定は難しい。その結果、肺炎のリスクを高めてしまう可能性や、リスクの回避のために過剰な食事形態の制限などを強いてしまう可能性がある。
エコーで誤嚥や咽頭残留をリアルタイムに可視化することができれば、誤嚥を予防するための食事の形態や体位の調整、残留物を除去するための吸引などの、ポイントオブケアに活用できる。この技術が臨床現場で広まり誤嚥性肺炎の予防など患者アウトカムの向上に効果を及ぼすためには、遠隔技術なども取り入れた教育プログラムの実施が必要である。
目的
- エコーを用いた誤嚥・咽頭残留の観察方法の遠隔教育プログラムを実施し受講者の到達度を評価すること
- 教育プログラム受講者がエコーを活用することで及ぼす患者アウトカムを評価すること
方法とこれまでの結果
1. 遠隔教育プログラム受講者の到達度
Eラーニング、Zoomを使用した遠隔実技講習会、Zoomとスマートグラスを使用した遠隔OSCE(客観的臨床能力評価)から成る教育プログラムを11名の訪問看護師が受講し、OSCEにおいて11名全員が基準点以上に到達した。OSCE受講後4カ月以内に受講者10名(90.9%)が受け持ち利用者の画像をオンラインサーバー上にアップロードしており、高い割合での現場での技術の活用が示唆された。
2. 患者アウトカムの評価
現場での活用の例として直接訓練時の評価や食事形態調整時の評価が挙げられる。今後は評価適用後の患者アウトカムを検証していく。
本発表は令和4年度内閣府事業 先端的サービスの開発・構築等に関する調査事業 ポータブル超音波診断装置の活用による在宅ケアでの看護アセスメント社会実装 の成果の一部である
必要な技術・希望する連携
連携を求める技術や系
今後の観察技術の普及の案として、誤嚥物や残留物をエコー画像上リアルタイムに自動で着色するアプリケーションの開発を検討しており、技術連携を希望する。また、現在は訪問看護師を主な対象として観察技術の普及を行っているが、他の臨床場面においても活用が望まれる状況があれば連携を行っていきたい。